ホジキンリンパ腫の腫瘍組織は少数のHodgkin/Reed-Sternberg細胞(HRS細胞)に加え、T細胞、マクロファージ、B細胞、好酸球、形質細胞、好中球、線維芽細胞などの多彩な細胞により構成されています2)。T細胞は腫瘍に浸潤する細胞の中で最も多く認められる免疫細胞であり、HRS細胞を取り囲む状態で認められます。
HRS細胞は、サイトカインや細胞表面分子を介して周囲の様々な細胞と相互に作用しながら、増殖に適した環境を形成します2)。特にPD-L1/2の発現は、細胞傷害性T細胞による免疫監視からの逃避を可能とします。
HRS細胞に加え、その近傍に存在する腫瘍関連マクロファージ(TAM)もPD-L1を発現していることが報告されています4,5)。一方、HRS細胞やTAMの周囲には、PD-1を発現するCD4陽性T細胞、CD8陽性T細胞が存在しています。
[方法]古典的ホジキンリンパ腫患者のホルマリン固定パラフィン包理組織切片を用いて多重蛍光染色を行い、HRS細胞(CD30)、TAM(CD68)、CD4陽性T細胞、CD8陽性T細胞の分布及びそれらのPD-L1、PD-1発現を検討した。
ホジキンリンパ腫では、PD-L1/PD-L2遺伝子の座位である染色体9p24.1領域の異常を高率に認め、90%以上(100/108例)の患者でコピー数増加または増幅を認めました。また、ゲノム異常が高度であるほど、PD-L1/PD-L2の発現も亢進していることが示されました(p=0.005、Kruskal-Wallis test)。さらに、STAT3のリン酸化を認めることから、JAK-STATシグナルの活性化が示唆されます。
Reprinted with permission. ©2016 American Society of Clinical Oncology. All rights reserved.
Roemer MG, et al. J Clin Oncol. 34(23): 2690-2697, 2016
ホジキンリンパ腫では、様々なメカニズムによるPD-L1/PD-L2の発現亢進が報告されています。
① 9p24.1増幅によるPD-L1/PD-L2増幅及びJAK2増幅7)
② JAK2増幅によりJAK-STATシグナルが増強され、PD-L1/PD-L2の転写を促進7)
③ 古典的ホジキンリンパ腫の約40%がEpstein-Barr Virus(EBV)陽性とされており8)、EBV陽性ホジキンリンパ腫ではEBVがコードするLMP1蛋白が、AP-1シグナルの活性化を介してPD-L1/PD-L2の転写を促進9,10)
T細胞は抗原提示しているがん細胞を認識し、細胞傷害活性を発揮します。
がん細胞はPD-L1及びPD-L2を発現して、活性化されたT細胞に発現するPD-1と結合し、T細胞に抑制性シグナルを伝達します。
オプジーボは、PD-1とPD-L1及びPD-L2との結合を阻害することで、がん抗原特異的T細胞の活性化並びにがん細胞に対する細胞傷害活性を増強し、抗腫瘍効果を示します(in vitro)11)。
MHC:主要組織適合遺伝子複合体 TCR:T細胞受容体
REFERENCES