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[臨床医の視点から:PD-L1検査の現状と未来]あなたはどう考える?免疫チェックポイント阻害薬臨床活用ディスカッション

公開日: 2017年4月20日

近年、免疫チェックポイント阻害薬が登場したことで、非小細胞肺癌に新たな治療選択肢が加わりました。一方で、各免疫チェックポイント阻害剤に対応するPD-L1診断薬が存在し位置づけも異なることから、検査の精度管理も含め臨床での課題も残されています。そこで今回は、臨床医、病理医それぞれの視点から、非小細胞肺癌に対するPD-L1検査の位置づけや現状、そして今後の展望について議論いただきます。

出演者

後藤 功一 先生

国立がん研究センター東病院 呼吸器内科科長

元井 紀子 先生

国立がん研究センター中央病院 病理・臨床検査科医長

臨床医の視点から:PD-L1検査の現状と未来

後藤先生

今回のガイドラインでは、IV期非小細胞肺癌EGFR遺伝子変異・ALK遺伝子転座・ROS1遺伝子転座陰性もしくは不明の非扁平上皮癌、扁平上皮癌ともに、一次治療としてペムブロリズマブ未使用の二次治療以降(PS:0-1)では、「PD-1阻害剤を行うように勧められる(グレードA)」と解説されています※1。これらの推奨の根拠となった試験の一例が、オプジーボの二次治療としての有用性を検討した海外第III相試験CheckMate 017(対象:プラチナ製剤を含む2剤併用療法に抵抗性のIIIB/IV期扁平上皮癌)および057試験(対象:プラチナ製剤を含む2剤併用療法に抵抗性のIIIB/IV期非扁平上皮癌)です。両試験において、オプジーボは二次治療として従来の標準治療であるドセタキセルをOS(全生存期間)で上回るという結果が得られました(図1、2)。

※1 日本肺癌学会「EBMの手法による肺癌診療ガイドライン 悪性胸膜中皮腫・胸腺腫瘍含む 2016年版」,2016,p147-174

推奨グレード

A:強い科学的根拠があり、行うよう強く勧められる

B:科学的根拠があり、行うよう勧められる

C1:科学的根拠は十分ではないが、行うことを考慮してもよい

C2:行うよう勧められるだけの科学的根拠が明確でない

D:無効性あるいは害を示す科学的根拠があり、行わないよう勧められる


元井先生

PD-L1発現別に見たOSはいかがでしょうか。

後藤先生

扁平上皮癌では、PD-L1発現1%未満であっても1%以上であってもオプジーボ群のOSがドセタキセル群を上回り、PD-L1発現の有無がオプジーボ群の予後に影響しないことが示されました(図3)。したがって、扁平上皮癌の二次治療においては、PD-L1発現の有無にかかわらずオプジーボが推奨されています。

※『EBMの手法による肺癌診療ガイドライン 悪性胸膜中皮腫・胸腺腫瘍含む 2016年版』

元井先生

扁平上皮癌におけるPD-L1検査の必要性は、どのように位置づけられますか。

後藤先生

ご紹介した臨床試験の結果から、扁平上皮癌の二次治療としてオプジーボを投与する際は、PD-L1検査は必要ないと考えています。
一方、非扁平上皮癌では、PD-L1発現によってオプジーボ群ではより長期の生存が得られる傾向が見られました。また、PD-L1発現陰性(<1%)においては、オプジーボ群とドセタキセル群で生存は同様でした(図4)。非扁平上皮癌については、ドセタキセルと比較して治療効果が高い患者を選択するのには有効だと考えられますが、PD-L1発現が低い群にも、オプジーボが効果を示す患者さんも含まれていますので、完全なバイオマーカーとはならないことも認識しておく必要があります。

厚生労働省「最適使用推進ガイドライン ニボルマブ(遺伝子組換え)~非小細胞肺癌~」では、PD-L1発現率が1%未満であることが確認された非扁平上皮癌患者においては、原則、ドセタキセル等のニボルマブ以外の抗悪性腫瘍剤の投与を優先すると解説されています

元井先生

すると、PD-L1検査の必要性は、どのように位置づけられますか。

後藤先生

非扁平上皮癌の二次治療においてオプジーボを投与する際、PD-L1検査は参考情報を得るための補完的な位置づけになると考えています。

※厚生労働省「最適使用推進ガイドライン ニボルマブ(遺伝子組換え)~非小細胞肺癌~」

元井先生

今回のガイドラインでは、ペムブロリズマブはどのような位置づけになっているのでしょうか。

後藤先生

ペムブロリズマブは、Ⅳ期非小細胞肺癌の非扁平上皮癌(EGFR遺伝子変異陰性、ALK遺伝子転座陰性、ROS1遺伝子転座陰性、もしくは不明)および扁平上皮癌でPD-L1≧50%の一次治療(PS:0-1)において行うことが勧められています(グレードA)※2※注2。その根拠となった試験が、ペムブロリズマブの一次治療としての有用性を検討した海外第III相臨床試験KEYNOTE-024試験です。この試験は、スクリーニングされた1,934例のうち、EGFR遺伝子変異あるいはALK遺伝子転座がなく、PD-L1が50%以上発現している未治療IV期非小細胞肺癌患者305例を対象に、ペムブロリズマブとプラチナベースの標準化学療法と比較検討しています。その結果、ペムブロリズマブは化学療法と比較して、主要評価項目であるPFS(無増悪生存期間)および副次評価項目であるOSともに有意な延長を示しました※3。PD-L1陽性細胞が50%以上確認された患者では、一次治療としてペムブロリズマブ単剤が勧められています。

※注2 その他、ペムブロリズマブは、Ⅳ期非小細胞肺癌の非扁平上皮癌(EGFR遺伝子変異陰性、ALK遺伝子転座陰性、ROS1遺伝子転座陰         性、もしくは不明)および扁平上皮癌において、一次治療としてペムブロリズマブ未使用、およびPS 0-1でPD-L1≧1%の場合の二次 治         療以降として推奨されています(グレードA)

※2 日本肺癌学会「EBMの手法による肺癌診療ガイドライン 悪性胸膜中皮腫・胸腺腫瘍含む 2016年版」,2016,p115-146

※3 Reck M, et al. N Engl J Med. 2016 Nov 10;375(19):1823-1833.


元井先生

以上のことを踏まえると、PD-L1検査の位置づけは、一次治療と二次治療、また、非扁平上皮癌と扁平上皮癌とで異なるということでしょうか。

後藤先生

はい、そのように思います。一次治療では、PD-L1発現レベルが50%以上の場合、ペムブロリズマブが選択可能となります。したがって、一次治療の薬剤選択ではPD-L1検査はペムブロリズマブによってベネフィットが得られる患者さんを見つけるためには必須の検査になると考えています。一方、二次治療でオプジーボを投与する場合、扁平上皮癌については、PD-L1の発現にかかわらずオプジーボのベネフィットが得られますので、PD-L1 検査は必要ありません。非扁平上皮癌については、参考情報を得るための補完的な位置づけになるため測定をすることが望ましいと考えています。

※厚生労働省「最適使用推進ガイドライン ニボルマブ(遺伝子組換え)~非小細胞肺癌~」

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