獲得免疫は異物に対して誘導される抗原特異的免疫応答であり、適応免疫ともよばれます。獲得免疫では、T細胞やB細胞といったリンパ球が活躍します1。獲得免疫が異物(非自己)を認識し、応答するプロセスについてみていきましょう。
T細胞は、抗原提示細胞の主要組織適合遺伝子複合体(Major histocompatibility complex:MHC)上に提示された抗原を、自身の表面に発現しているT細胞受容体(T-cell receptor:TCR)を介して認識し活性化します。T細胞には、CD8+T細胞とCD4+T細胞があります。
●CD8+T細胞
CD8+T細胞は抗原提示細胞のMHCクラスⅠ分子に提示された抗原を認識して活性化し、細胞傷害性T細胞(Cytotoxic T lymphocyte:CTL)となります。CTLはIFN-γ、TNF-αなどのサイトカインや、パーフォリン、グランザイムといった細胞傷害性物質を産生し、認識した抗原を目印に標的細胞を攻撃します。
●CD4+T細胞
CD4+T細胞は他の免疫担当細胞の活性化を手助けするヘルパーT細胞の役割をもっており、抗原提示細胞のMHCクラスⅡ分子に提示された抗原を認識して活性化します。活性化したCD4+T細胞は、IL-2、IFN-γ、IL-4などのサイトカインを産生し、CD8+T細胞活性化の補助や、B細胞の分化と抗体産生にかかわります。 一方でCD4+T細胞には制御性T細胞(Regulatory T cell:Treg)も存在し、さまざまな抑制機構により自己に対する免疫寛容誘導および過剰な免疫応答の制御を司っています(詳細は 3. 免疫編集Ⅱ 平衡相~逃避相:免疫逃避、4.免疫チェックポイント分子を参照)。
●T細胞のメモリー機能2,3
抗原と出会う前の非活性化状態のナイーブT細胞が、TCRを介した抗原認識により活性化するとエフェクターT細胞となり、エフェクターT細胞の一部はメモリーT細胞として長期生存し、次の抗原曝露に備えます。
文献3より改変
B細胞は、タンパク質、糖、脂質など、多種多様な抗原を直接認識することができます。非タンパク抗原(糖、脂質など)は直接B細胞に認識され、B細胞の活性化が成立します。タンパク抗原は、B細胞に取り込まれた後、B細胞上のMHCクラスⅡ分子に載せられ、CD4+T細胞に対し抗原提示されます。抗原提示を受けたCD4+T細胞はサイトカインを放出し、これによってB細胞が活性化します。活性化したB細胞は増殖し、メモリーB細胞とエフェクターB細胞(抗体産生細胞である形質細胞)へと分化します。エフェクターB細胞は抗原特異的な抗体を産生し、病原体を攻撃します。メモリーB細胞は長期生存し、同じ抗原に再曝露した場合は迅速に形質細胞へと分化して、抗体を産生します。
文献4より改変
獲得免疫が誘導されるまでにかかる時間は自然免疫に比べて長く、数日程度の期間が必要です。これは抗原の細かい特徴を認識し、抗原特異的なリンパ球や抗体を産生するのに時間がかかるためです1。
こうしたさまざまなプロセスを駆使して、免疫系は非自己を排除しています。これらの異物に対する攻撃(免疫反応)が、自らの細胞や組織に向かうのを防ぐため、生体には免疫寛容というしくみが備わっています。これは、特定の抗原に対して免疫反応を起こさなくなるしくみです。免疫寛容には、胸腺でのリンパ球の成熟過程で自己抗原に強く反応するリンパ球が除去される「負の選択」や、末梢でのTreg、免疫チェックポイント分子といった免疫抑制機構が関与していま
REFERENCES