がん免疫療法では、さらなる臨床効果の向上を目指して、他の治療法との組み合わせが検討されています。ここでは、免疫チェックポイント阻害薬を含む治療法の組み合わせについて解説します。
異なる免疫チェックポイント阻害薬の組み合わせとして、抗CTLA-4抗体と抗PD-1抗体/抗PD-L1抗体の組み合わせについて検討が進められています。これらの免疫チェックポイント阻害薬は、がん免疫応答のしくみ(Cancer-Immunity Cycle)のなかで、それぞれ異なるステップに作用します(免疫チェックポイント分子の詳細は 4. 免疫チェックポイント分子、免疫チェックポイント阻害薬の詳細は 5. 免疫チェックポイント阻害薬を参照)。
抗CTLA-4抗体はプライミング相で作用し、CTLA-4を阻害することで抗原特異的T細胞の感作と活性化を促進します(下図STEP③)。
抗PD-1抗体/抗PD-L1抗体はエフェクター相で作用し、PD-1とPD-L1/PD-L2※の結合を阻害することでT細胞の活性化を維持して抗腫瘍免疫効果を回復させるほか(下図STEP⑦)、プライミング相でも免疫応答抑制を解除する可能性が示唆されています(下図STEP③)。
このように、作用点の異なる薬剤を組み合わせることの可能性について検討が進められています。
※PD-1/PD-L2 経路の阻害は抗PD-1抗体のみ
文献2より作成
殺細胞性抗がん剤はがん細胞を直接標的とし、アポトーシス(プログラムされた細胞死)をもたらします。このアポトーシスの過程で放出されるがん抗原に対してT細胞が活性化し、抗腫瘍免疫応答が誘導されます。また、制御性T細胞(Regulatory T cell:Treg)や骨髄由来抑制細胞(Myeloid-derived suppressor cell:MDSC)といった抑制性免疫細胞に作用する可能性がある殺細胞性抗がん剤があります。分子標的薬のなかにも、免疫系に作用を及ぼす薬剤があります。このような種々の治療薬と免疫チェックポイント阻害薬との組み合わせにより、臨床効果の向上が期待されており、研究が進められています。
文献1より作成
このほか、外科手術や放射線療法と免疫チェックポイント阻害薬の組み合わせも検討されていますが、現時点では課題も多く残されています。
REFERENCES