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9. バイオマーカー

がん免疫療法は、臨床効果に個人差があることや、免疫関連の副作用(irAE)のリスクから、適応患者の層別化の必要性が指摘されています1。このため、治療に対する反応性の予測や、副作用が懸念される患者の識別ができるバイオマーカーの探索が進められています1,2。ここでは、現在検討されているバイオマーカーをご紹介します。

現在検討が進められているバイオマーカー

現在、バイオマーカーの候補として、「PD-L1」、「がん組織の遺伝子変異・ネオ抗原(ネオアンチゲン)」、「腫瘍浸潤活性化T細胞」などの研究が進められています1

文献1より作成


●PD-L1 1,2
PD-L1発現は、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体の単剤投与による臨床効果を予測する有力なバイオマーカー候補と考えられており、がん細胞のPD-L1発現と抗PD-1抗体の臨床効果には相関が認められています。しかし、PD-L1の発現がなくても臨床効果が認められるケースも報告されています3。これはPD-L1の発現が一過性であること、炎症性サイトカインによって発現が大きく変動すること、またがん組織内での発現が不均一であることなどが原因と考えられています。現在、PD-L1の正確な測定方法の確立やカットオフ値の設定などが検討課題となっています。

文献1,2より作成


●がん組織の遺伝子変異・ネオ抗原(Neo antigens;ネオアンチゲン)1,2
がん組織の遺伝子変異の数が多い症例では免疫チェックポイント阻害薬の臨床効果が認められやすいことが報告されており、遺伝子変異がバイオマーカー候補として検討されています。これは、がん細胞に遺伝子変異が生じると、正常細胞にはない非自己の物質(がん抗原)が作られ、免疫系に異物として認識されやすくなるためだと考えられます。こうした、がん細胞のみで発現している腫瘍特異抗原(Tumor-specific antigens:TSA)はネオアンチゲンとよばれます。
個々の症例ごとに網羅的に遺伝子変異を探索する必要があるため、現時点ではコスト面の問題がありますが、今後の応用について注目されているバイオマーカーの1つです。

文献1,2より作成


●腫瘍浸潤活性化T細胞 1,2
活性化T細胞、特に、細胞傷害性T細胞(Cytotoxic T lymphocyte:CTL)のがん組織への浸潤は、さまざまながん種で予後良好因子であることが示されています。がん組織やその辺縁にCTLが浸潤・増殖していることは、免疫チェックポイント阻害療法の臨床効果との相関が示唆されています。さらに、CTL上のT細胞受容体(T-cell receptor:TCR)の多様性を測定することによる、CTLのがん抗原の認識・増殖の評価が試みられていますが、まだ一定したデータは得られておらず、今後さらなる検討が必要とされています。

文献1,2より作成

バイオマーカー研究の今後の展開

遺伝子変異の均一性やサイトカイン分子およびその受容体など免疫関連分子の変異、がん微小環境での代謝環境の影響、腸内細菌叢の免疫応答への関与が示されており、バイオマーカーとしての可能性が検討されています1

REFERENCES

  • 西川博嘉. がん免疫療法. 2017;1:20-25.
  • 上田龍三 監, 西川博嘉 編. がん免疫療法ハンドブック, p54-61, メディカルレビュー社, 2016
  • Brahmer J, et al. N Engl J Med. 2015;373:123-135.
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